第三のポイントは、「情報を誰でも簡単に発信できる環境になった」ことによる「情報とは送達するものではなく、交換するものだ」という感覚です。
インターネットの世界では、誰でも情報コンテンツを制作できるし、クリック一発でそれを発信できます。情報の送り手にはもちろん、商品の売り手にさえ簡単になれる。繰り返しお話しているように、マスメディアの時代には決定的だった情報の送り手と受け手という関係性が、感覚的にも実体上も、だんだん曖昧になってきているわけですね。
もっとも、それを無数の「ミニ放送局」ができたと考えるのは間違いです。ネットで情報発信する個人は、放送局が電波を送信するように一方的に送達しているわけではないからです。アップされた情報は、人から人へと受け渡されていったり、ピンポンのように反響しあったりしながら、網の目を不規則に走りまわる。
つまりネットの情報交通の基本原理は「連鎖」であり「交換」なんですね。
もらったら、渡す。もらったら、返す。
この感性こそが、現代の新しい情報感覚の根幹をなすものだとぼくは考えています。
リンクやトラックバックはもとより、ユーチューブやアマゾンの評価コメントもそうだし、なによりメールがそうですよね。電話は居留守を使ったところでなんの問題も起きないけれど、メールは返さなかったというだけで喧嘩を売ったと見なされる(笑)。
情報を受け取ったらそれに反応するのが当たり前。ケータイ・カルチャーがその典型だけど、情報を交換する=シェアすることがコミュニティの行動規範になっている。考えてみると、これ、凄いことですよ。まさに革命的な状況というべきかもしれません。
ただし、ブログにしろコメントにしろ、いまのところその99%は読むに値しないレベルです。情報発信のハードルが一気に下がったために、受け手の立場に甘んじていた素人が一斉に送り手側になだれ込んでいるだけで、とてもじゃないが「革命」などとはおこがましいと言う見方もあるでしょう。当然だし、ぼくも半分はそう思います。
ただ、少なくともぼくたちの感性が大きく変わりつつあることだけは確かです。