さて、これまで「空間で語るとはどういうことか」、続いて「メディアとしての空間にはどんな性能があるのか」を見てきたわけですが、最後に「これからの空間メディアに求められることはなにか」について考えてみたいと思います。
こんな話をするのは、いうまでもなく、我々を取り巻く情報環境が大きく変わりつつあるからで、冒頭でお話したように、いまあらゆるメディアが情報世界の再構築に伴う調整の荒波に晒されています。もちろん空間メディアの立ち位置も変わらざるを得ないし、変わらなければ生き残ることはできません。
実は、いま情報交通の世界で起きていることは、本当に革命なのかもしれないのです。人の想像を超えるスピードで変貌しつつあるというだけでなく、構造レベルでドラスティックな変化が進んでいるからです。
ちなみに、ぼくは「いま人類史上かつてない未曾有の変化が……」とか「産業革命以来の大きなうねりが……」みたいな台詞が出てくる本はだいたい眉唾だと思っているし、「○○革命」というタイトルの本は信用しないことにしています(笑)。なんか、セラミック包丁の実演販売みたいでしょ?(笑)。
でも、情報を取り巻く現在の状況は、ほんとうに15世紀にグーテンベルクが活版印刷を発明して以来の大きな構造変化なのかもしれない。もしそうなら、ぼくたちはいま、まさしく革命の真っ只中に立ち合っていることになります。
変化はふたつのフィールドで進んでいます。
ひとつは情報交通の現場です。情報の生産、流通、消費のいずれもが、この10年でその姿を大きく変えました。パッケージになった情報が郵便物のように届けられるだけだった牧歌的な状況から大きくジャンプしてしまった。気がついたら身体(ルビ:からだ)の半分が別の村に引っ越していた、みたいな感じです。
もうひとつは情報や情報環境に対するぼくたちの感性。別の村で暮らしているうちに、メンタリティが変わってきた。その変化は、おそらく我々自身が自覚する以上に大きいだろうと思います。そうなれば、もちろん、文化が変わります。