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コラム

空間メディア入門

2-21日本デザインの遺伝子

2012.08.30

 海外で日本のプロダクトデザインを紹介する展覧会は、これまでにもいろいろとありました。しかしその多くは優れたデザイン製品を美術品のように「観賞」するもの。実際、美術館の企画展だったりするわけです。
 でも今回は「それは止めてくれ」と言われている。期待されているのはデザインの美しさを愛でることではなく、デザインの背後に潜む「構造」を示すこと。前例はほとんど参考になりません。
 それでも最初は気楽に考えていました。彼らの望む情報が簡単に手に入るだろうと思ったからです。なにしろ本屋に行けばデザインの棚に山ほど本が並んでいますからね。その中からピックアップした情報をうまく編集すればシナリオは書けるだろう、そう高を括っていたわけです。
 しかし、いくら探しても見つからない。歴史に残るプロダクトを一覧する図録的な本や観念レベルでモノづくりの精神を説くデザイン論はあっても、日本デザインの特性を構造レベルで紐解いて説明してくれるものにはついにであうことができませんでした。
 ならば仕方がない。腹を括って自分で組み立てるしかありません。ぼくは改めて戦後日本のプロダクトを見渡してみました。
 確かに、そこにはなにかしら通底する「構え」があるように見えるし、独特の「匂い」がします。しかもそれは偶然や突然変異でそうなったわけではないし、ある日誰かがそうしようと決めたものでもなくて、古くから日本人の血の中に連綿と受け継がれているように見えます。
 ぼくたちの身体(ルビ:からだ)の中には長い歴史に育まれた固有のデザインマインドが潜んでいる。それはいまも脈々と息づいていて、つくるモノは変わってもその本質は形を変えて現代に生きている。
 そう仮説を立て、『日本デザインの遺伝子〜DNA of Japanese Design』をテーマに掲げることにしました。

 

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