スタイリスト・熊谷隆志、グラフィックデザイナー・グルーヴィジョンズ、ミュージシャン・野宮真貴、アートディレクター・野田凪、建築家・みかんぐみ……。
まさにその世界を代表するすごいメンバーでしょう? 彼らのような一線クリエイター約60組の参加を得て、SCAは華やかに開幕しました。
もちろん、目の前に広がっていたのは普通のフリマとはまったく違う光景です。期待通りにブースそのものがクリエイティブだったし、売っている人たち自身がクリエイティブだったから、見ているだけで面白かった。なかにはほんとうに1千万円の値札をつけた輩もいたんですよ(笑)。
当然、観客はブースに並んだモノたちを実際に手に取ってみることができます。「展示物」ではなく、一応「商品」ですからね。憧れのクリエイターの持ち物に直接触ることができる。しかも目の前には本人がいる。なぜそれをもっているのか、どこが気に入っているのか、どんなときにそれを使うのか、といった“いわれ”を本人から聞くことができるわけです。こんな経験、普通はあり得ないでしょう?
おそらく観客はクリエイターのプライベートの一端に触れたと感じただろうし、そのクリエイターの世界観を少しだけ実感できたと思ったでしょう。そしてこんな出来事が当たり前のように起こる六本木ヒルズという街を、特別な場所だと感じたかもしれません。
こうした濃密なコミュニケーションは空間でしかできないし、実感が得られるのはここにあるのがインフォメーションではなく「体験」だから。同じ企画を雑誌でやることもできるけれど、両者が提供する情報は似て非なるもので、まったくの別物です。
ただし、イベントとしてやればいいってもんじゃないですよ。もし単なる「愛用品のケース展示」にしてしまったら、面白くもなければ臨場感もない。シズルのある情報環境をつくろうと思うなら、そのための戦略と技術が必要です。
肌で、全身で感じ取った体験は忘れません。旅の記憶と同じ。ぼくたちはそれをつくり出そうと日夜もがいているんです。