では次に、「メディアとしての空間はどのような性能を備えているのか」について考えていきましょう。空間という武器を使いこなすためには、その性能をきちんと理解しておくことが必要ですから。
ぼくは、空間が他のメディアと比べて際立っている機能が三つあると考えています。
それは、
@ “体験”を通して“実感”を伝える
A “対話”を通して“関係”をつくる
B “触発”を通して“発見”を促す
というもの。言い換えれば、
@ 空間は“わかる”メディア
A 空間は“顔の見える”メディア
B 空間は“背中を押す”メディア
であるということです。
メディア空間のつくり手に期待されているのは、これらの性能をフルに活かした高機能な情報空間を組み立てること。空間が潜在的・本来的にもっている性能をうまく引き出すということですね。
もちろん、なにも考えずにただ漫然とつくるだけでそうなるわけではありません。意識して戦略的に引き出そうとしない限り、空間はなかなか力を貸してくれない。人見知りなんです(笑)。
固有の性能に自覚的であるべき、というのは、単にそのイベントの訴求力の大小にかかわるから、というだけではありません。そうでないと、他のメディアにもっていかれてしまうからです。
インターネットがない時代は平穏でした。「パネルを並べた展示ブース」であっても、そこに行かなければ得られない情報が書いてあるなら、わざわざ足を運ぶ意味もあった。
でも、いまはそんな時代じゃありません。そして、もう昔には戻れないんです。