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コラム

空間メディア入門

1-19 次のアクションにつなぐ

2012.5.17

 ところで、このプロジェクトには続きがありました。
 敏子が創設し、館長として活躍していた岡本太郎記念館で、翌7月から『岡本敏子の60年』という特別展を行ったのですが、この『岡本敏子と語る広場』をその展覧会につないだのです。
 著名な方々を含めて、お別れ会にはたくさんの素敵な言葉が寄せられました。でも、誰もそれを見ることができません。もちろん人に読ませるために書かれたものではないけれど、敏子への思いが詰まった貴重なドキュメントです。そのまま埋もれさせてしまうのはいかにも惜しい。そこで、それを一堂に会して見ていただくことにしたのです。
 そして、館内でも同じように言葉を手向けてもらうことにしました。敏子ときちんとお別れしたかった人がみなあの日にスパイラルに来られたわけではないからです。来たくても来られなかった敏子ファンがたくさんいる。そういう人たちにも同種の体験を用意しようと思ったわけです。
 今度は書いたカードを自分で壁にピンで留めてもらうことにしました。そして最後にはこんなアナーキーな感じになりました(笑)。
 お別れ会のあとに思いついたことではありません。あらかじめ二つのイベントをセットで考えていました。実は、そうでない限り二つ目のイベントは成立しないんですよ。書かれたカードを断りなく公開することはできませんからね。
 お別れ会でメッセージカードを渡すとき、「記念館で展示するかもしれない。住所等の情報は裏面に書いて欲しい」といったような注意書きも一緒に配布していたんです。
 あとで詳しくお話しますが、イベントは必ずしも「そこが終点」ではないし、「すべてを言い切る」必要もない。往々にして自己完結させることだけを考えがちですが、次のアクションを引き出す跳躍台であったり、種々の営みをつなぐ結節点であっていいし、むしろそうした発想こそが大切なのです。

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