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コラム

空間メディア入門

1-5 「出来事」で情報を伝える

2012.3.26

ではいったい、人は空間というメディアになにを求めているのでしょう?
 なにを期待してイベントという手段を選ぶのでしょう?  
 ぼくたちは「誰かになにかを伝えたい」「誰かとなにかを成し遂げたい」「誰かをなにかに巻き込みたい」、そう考えたときにイベントを仕掛けます。
 もちろん情報を伝える方法は山ほどあるわけですが、パンフレットや新聞広告、電話や手紙などでは達成できない案件、すなわち「出来事」でなければ実現できないコミュニケーション課題に直面したとき、ぼくたちはイベントという手段を選びます。
 相手と時間・空間をシンクロさせる状況をつくり、「体験」を共有するなかでコミュニケートしていくわけですね。これは万博のような巨大イベントから彼女へのプロポーズまで、イベントすべてに共通する構図で基本的な原理はまったく同じです。ただ規模が違うだけ。
 ぼくはプロポーズをメールで済ませたという話を聞いたことがありませんが(笑)、それはプロポーズという課題にインターネットというメディアが不向きだから。この種の重要案件はFace to faceのコミュニケーションに限ります。
 そういえば、しばらく前に「インターネット上の博覧会」を標榜する「インパク」というイベントがありましたが、パッとしないままひっそりと幕を閉じました。
 理由のひとつは、「臨時に立ち現れる非日常の体験」という博覧会のアイデンティティと、「日常的なインフラとしていつでもそばに控えている」インターネットの特性とを、未消化のまま統合したからです。本来対極にあるものが整理されないまま同居させられたので、プロジェクトの輪郭が曖昧だったし、存在意義も希薄でした。
 先にお話した通り、メディアにはそれぞれ特性があり、得意なことと不得手なことがあります。もちろん空間メディアも例外ではありません。
 特性をよく見極めたうえで、「それぞれのメディアを効果的に使いこなす」という発想が大切なのです。

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