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コラム

空間メディア入門

1-15 祝葬

2012.5.1

 「空間で語る」とはすなわち「体験で伝える」ということ。
 この二つのワードをつなげると『空間体験』という言葉になります。これが「空間というメディア」の本質であり、武器にすべき概念です。
 「空間体験」を通してコミュニケートするメディア。それが空間メディアです。
 『岡本太郎と語る広場』にも、ここにしかない「空間」と、そこだけにしかない「体験」がありました。それはマスメディアやインターネットでは決して再現できないものでした。空間には空間にしかできない仕事があるのです。
 この葬儀を伯母はとても喜んでくれました。参列してくださった筑紫哲也さんと笑顔で話しているこの人が伯母の岡本敏子です。喪主なのに嬉しそうでしょう? 
 ぼくの自慢は、泣く人がひとりもいなかったということ。
「葬式にはするな」と言われてつくった葬儀は、こうして参列者がニコニコと語りあう場所になりました。
 当日の夜、筑紫さんがニュース番組のなかで「きょう太郎さんの葬儀に行ってきた。太郎さんらしい葬儀だった。考えてみれば人の生き方は一人ひとり違う。だから送り方もそれぞれで違っていい、いや違うべきだ。そう思った」といったようなお話をされながら、『祝葬』という言葉を贈ってくれました。最高の褒め言葉です。感激しました。
 余談ですが、このあとぼくは、名前を聞けば誰でも知っている著名な方に「オレのときにもよろしく頼む」と言われたりしたんです(笑)。まあ、そのときはなんとか笑ってごまかしたんですが(笑)、その後もう一度だけ葬儀をプロデュースすることになってしまった。
 送ったのは、このとき笑っていた伯母の岡本敏子でした。

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