この世界一の大屋根を生かしてやろう。
そう思いながら、壮大な水平線構想の模型を見ていると、どうしてもこいつをボカン!と打ち破りたい衝動がむらむら湧きおこる。
優雅におさまっている大屋根の平面に、ベラボーなものを対決させる。
太陽の塔は、展示物として美術館を渡り歩くフツーの彫刻≠ナはありません。
高さ70mの圧倒的存在感、内部に擁する濃密な展示、空間建築と同様の建立プロセスなど、あらゆる点で彫刻の常識から外れていますが、いちばんの違いは相手≠ェいた≠アとでしょう。
先にリングに上がっていたのは《大屋根》でした。
岡本太郎がテーマ館の構想を練りはじめたとき、すでに大屋根 が万博の主役としてラインナップされていました。
空中都市のひな形である大屋根は、万博の思想を体現するモダニズムの極致。
太郎はこれを打ち破る「対極」を投げ入れることで、万博を覆う楽観的な未来主義に風穴を開けようとします。
それから半世紀。大屋根に対峙するもの≠ニして構想された太陽の塔は、ひとりでリングに立っています。
ならば逆に、いま太陽の塔に対峙する建築・空間があり得るとしたら、それはいったいどのようなものなのか。
若い才能に訊いてみたいと思いました。
幸い、実施したアイデアコンペには150点の応募作品が集まり、審査員に五十嵐太郎、椹木野衣、藤本壮介という最高のメンバーを迎えることができました。
本展では入選作をご覧いただくとともに、公開審査で最優秀賞を選びました。 |